巣を崩壊させる!?ミツバチヘギイタダニ
- By: ミツバチの生態研究室
- カテゴリー: ミツバチの天敵
- Tags: 体液, 生態, 被害
私たち人間が食物としている野菜や果物の実りには、ミツバチが大きな役割を果たしてくれていることをご存知でしょうか。ミツバチは世界の作物の約1/3を受粉していると言われます。それくらい人間にとって欠かせない存在であるミツバチですが、そんなミツバチには天敵がたくさんいます。
今回はそんなミツバチの天敵の1つである、「巣を崩壊させる!ミツバチヘギイタダニ」についてまとめてみました。
目次一覧
体液を吸い取る!?ミツバチヘギイタダニの生態
ミツバチヘギイタダニの特徴について
ミツバチヘギイタダニという存在を初めて知ったという人も多いのではないかと思います。私たちが知っている普通のダニと何が違うのでしょうか。
ミツバチヘギイタダニはアズキ色で偏平な卵型をしています。ミツバチヘギイタダニの寄生による病害、バロア病は届出伝染病としても指定されています。
ミツバチヘギイタダニの生態について
メスのミツバチヘギイタダニはミツバチの成虫に取りつきますが、幼虫巣房を見つけるとただちに侵入して産卵を始めます。オスの卵を一つ産んでから、メスの卵を1〜5個産むとされています。
一般的にはメスの働きバチよりも、オスの蜂に寄生しやすい傾向があります。またオスの蜂児に寄生した場合は、メスの働き蜂よりも生育期間が長いため、子ダニの出産数も増えます。
孵化した子ダニは、蜂児の体液を吸って成長し、やがて巣房内でダニのオスとメスの間で近親交配が行われます。交尾を終えたオスダニは死亡します。メスダニは羽化するハチに付着して巣房から出て行きます。
ミツバチヘギイタダニの被害とは
ミツバチヘギイタダニに寄生されると?
ミツバチヘギイタダニに寄生されると、成虫の矮小化が起きたり、発育途中で蜂の幼虫が死亡したりします。また吸血されることにより、羽化不全が起こります。羽根が縮れた奇形蜂となり、育児が上手にできなくなります。
体表に成ダニを付着させた働き蜂が目につくようになるのが第一段階です。
羽化不全の働き蜂が巣板上に時折り見られるようになるのが第二段階です。
そして巣門前に蛹や翅の生育不良の働き蜂が捨てられるようになるのが第三段階です。ここまでくると被害は深刻で、巣の全滅が近いことを知らせています。
ミツバチヘギイタダニの感染拡大
ミツバチヘキイタダニは通常他の巣に伝播することはありません。しかし巣箱間で巣板の移動を行ったりすると養蜂場内に広がることがあります。
また最近の研究によると、ミツバチヘキイタダニに寄生された働き蜂は記憶力が低下し、他の巣に間違えて迷い込み、その結果感染拡大を招くことがあります。
またオスバチは結婚飛行が終わった後に別の巣に迷い込むことがあるので、その際も他の巣に感染させてしまうことがあります。
ミツバチヘギイタダニを駆除するためには?養蜂の対策を紹介
殺ダニ剤を使用する
日本におけるミツバチヘギイタダニの駆除剤としては、動物医薬品として「アピスタン」と「アピバール」が認可されています。社団法人日本養蜂はちみつ協会を通じて購入することができます。決して市販の農薬や未承認薬剤を使用してはいけません。
また殺ダニ剤使用時に貯蜜されたハチミツには薬剤が浸透しているため、採蜜一か月以内の使用は厳禁です。
粉砂糖による防除
粒子の細かい粉砂糖を働き蜂に振りかけることにより、ダニを落とす方法です。2種類のやり方があります。
1.巣板の上部に細かい網を置き、その上から粉砂糖を振りかけて落とす方法
2.調理用の粉ふるいを使って、巣板上の蜂に直接振りかける方法
巣箱の底に粘着性の紙を敷いてその上に目の細かい網を張り、そこに落ちてきたミツバチヘギイタダニと余分な粉砂糖を回収できるようにすると、巣箱を汚しにくく便利です。
その他のミツバチの天敵はこちら → 強力なアゴでミツバチを食べる!オオスズメバチ
まとめ
ミツバチの天敵であるミツバチヘギイタダニについてまとめてみました。ダニは人間にとっても厄介な存在ですが、ミツバチにとってのミツバチヘギイタダニは巣の存在そのものを脅かす恐ろしい存在だということがわかりますね。